学習院大学任意団体銭湯愛好会ブログ

学習院大学を拠点とする銭湯を愛する大学生のサークルです。

万年湯銭湯レポート

万年湯銭湯レポート

 

基本情報

住所 新宿区大久保1-15-17

最寄り駅 新大久保駅 徒歩5分

オーナー 武田信玄

定休日 土

営業時間 15時~24時

電話番号 03-3200-4734

サービス 無料リンスインシャンプーとボディソープあり・無料貸しタオル1枚あり

 

テーマ

<異国人街にあらわれた信玄の隠し湯

万年湯の特徴として、真っ先に感じられることはその外観及び内装と軟水だと私は考えている。万年湯は、昨年の8月21日にリニューアルオープンし、和モダンなテイストの銭湯として再スタートした銭湯である。

 

万年湯のデザインを行ったのは、文京区ふくの湯や墨田区御国湯、板橋区第一金乗湯などを手掛けた今井健太郎氏で、それらを訪れてみると似通った点を見つけてしまうことも多いが、それ以外の点も万年湯には多くある。

万年湯の利用客数はリニューアル後から現在に至るまで、銭湯としては珍しいほど大量のお客様が来訪し、それは日常として利用する人や観光客、高齢者や若者、国籍や人種などの様々な要素を飲み込んでおり、1日あたり300人~350人が利用し、多い時では400人以上が利用するという。

しかし、万年湯は決して面積の広い銭湯ではないのに対して、不思議なことに人による圧迫感をあまり感じない銭湯でもある(限度はあるが)。この点について、オーナーはそのあたりを巧妙に考えたうえで設計してもらっていると話しており、的を射た戦略が地の利を生かしていると感じられる。

 

湯舟へのオーナーの熱意として、すべての銭湯の悩みの一つとしてある温度管理の問題がある。万年湯ではガスボイラーを使用しているため、温度が下がった時の再加熱では元の温度に回復しにくい傾向があり、水で埋められるとエネルギーロスが発生しやすいという側面がある。それに対して、高温風呂(約44℃~44.5℃)と中温風呂(約40℃~40.5℃)の2種類の浴槽を用意し、それぞれ温度変化を最小限に抑えるため、多くの銭湯で湯船に設置されている水の蛇口を設置しなかったことがある。オーナー曰く、個人的な好みとしては高温風呂をもっと熱くしてもいいとのことだが、お客様が入れる温度にする必要があるが、お客様の好みの温度は人によって差があるため、高温と中温を作り、それをいじることができないようにすればお客様は選んだ上で入浴してくれる。逆にそれでもとやかく言うお客様は自分の家庭風呂でお好みにする方がいいのではないか、というように話していた。

 

湯舟の種類としては、先にあげた高温風呂と中温風呂に加え、水風呂が備えられており、高温風呂にはミクロの気泡によって濁り湯のように見えるシルク風呂、中温風呂にはバイブラ、ジェット座風呂、電気風呂が、水風呂は源泉かけ流しのため季節により温度が変化する等がある。高温風呂は慣れていない人にとってはとても熱く感じるため、選ばれた人が入れる((笑))ともオーナーは語る。

 

そして、最大の魅力であり万年湯の自慢でもある軟水は、リニューアル後に導入され、都内屈指の強軟水ではないかと私は感じている。しかし、リニューアル後から爆発的に増えた利用客数はオーナーの予想を超えた一面もあり、当初、お客様が集中する日曜祝日では軟水が営業途中できれてしまうといったハプニングもあった。現在では、新たに軟水器を増設し、毎日多くのお客様に上質でスベスベの軟水を提供している。軟水を導入してから、お客様から肌の調子が良くなった、との声もあり、オーナー自身も敏感肌とのことでお客様も自分も喜ばしく満足のいく湯となったとも語っていた。

 

万年湯の創業は昭和36年。現在3代目で祖父・父から代々受け継いできている。

信玄さんが銭湯を継ぐこととなる契機は先代が重病になった時で、それまでは明確に銭湯を継ぐということを言われてきたわけではなかったとのこと。しかし、代々銭湯を経営してきたとのこともあり、少なからず家業を手伝っていたことやその借金等の負の側面もあったため、半ば仕方なく継いだという経歴がある。

銭湯を経営することは、苦悩と葛藤の連続で、どちらかといえば他者に勧められるものではないと言う。ただ、今現在、銭湯を精いっぱい経営し頑張ってきていることには自信を持っており、すべてを振り返るときに風呂屋でよかったと思えるように頑張っているとのこと。

 

オーナーは今の万年湯について、自分の店であることに愛着をもち、それがお客様に評価されることが、銭湯を経営する上で嬉しいことでもあると語っていた。

以前の万年湯は先代が作り上げてきた万年湯であり、設備や内装で自分の思い通りにいかないことも少なくなかったらしく、その点、リニューアル後は自分の店として更なる自覚を持ち、より一層努力することができるとも話す。

 

先代から受け継ぐ、一種の伝統とそれに対する自己のアイデンティティーの葛藤を今の形に具現化し、自らの将来を拓くことが、未来の銭湯文化の担い手にとって必要であるというように私は感じている。

 

そして、私たち銭湯好きはあくまでお客として感想を持つのであって、やはり経営者の方々にはそれ以上の苦悩があり、それを理解した上で、業界として応援することも大事だが、個々の銭湯を愛し、自分の好きな銭湯を見つけ、通い、少しでも寄り添えるような関係も望ましいのではないかと改めて自らのスタンスを考え直す契機となりました。

 

取材 東海大学 寺牛恒輝

記事 学習院大学 宇佐見和希